この記事では、LVDS信号の放射ノイズ対策として、「コモンモードノイズ」に着目した対策方法を紹介しています。
「ノイズ対策をいろいろためしたけど、全然下がらない。」という場合に、「コモンモードノイズ」の観点でノイズ対策をためしてはどうでしょうか?
ここで紹介する放射ノイズ対策をためす前に、
まずは、LVDSの波形を歪みのないキレイな状態に改善することをおススメします。
と言うのも、波形の歪みをへらすと、信号に含まれる高調波成分がへります。
その結果、放射ノイズも小さくなって、上記の波形改善でノイズ問題が解決する場合があるからです。
歪んだ波形は高調波成分を多く含んでいて、放射ノイズが出やすい状態です。まずは、下記で紹介したLVDSの波形改善策をためしてみてください。
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それでも「放射ノイズが下がらない」場合に、以降の「コモンモードノイズ対策」をためしてみてください。
この記事を書いているわたしは、デジタル回路設計歴20年です。これまでの経験と知識を活かし、現在はマネージャーとして商品企画や開発チームのサポートを行っています。
もくじ
差動信号でも、放射ノイズは出る!
一般的に、LVDSやUSBなどの差動信号は、「プラス信号とマイナス信号の磁界が打ち消されるので、ノイズが出にくい。」と言われていますよね。
でも、プラス信号とマイナス信号のわずかなズレ(立ち上がり時間や出力タイミングなど)が、「コモンモード成分(同相成分)」を発生させます。
ノイズ対策として特に注意したいのが、この「コモンモード成分」です。
「差動成分」は、周波数が高くなるにつれて小さくなりますが、「コモンモード成分」は、高い周波数成分を持つので、放射ノイズが出やすい要因となります。
では以降で、「コモンモードノイズ」の対策方法を紹介していきます。
差動信号のコモンモードノイズ対策
対策①:差動信号ライン上に「コモンモードフィルタ」を挿入する
差動信号に含まれる、信号として必要な「差動成分」はそのまま通過させ、ノイズとなる不要な「コモンモード成分」を遮断するノイズ対策部品です。
対策②:受信側の終端抵抗を「センタータップ型」にしてみる
DDR系の差動クロック信号でも使われる終端方式です。
終端抵抗 100Ωx1個を、50Ωx2個に分けて、さらに抵抗同士の接点とGND間にコンデンサをつなぎます。
このように接続することで、LVDSのプラス信号とマイナス信号パターン上に生じた高周波の「コモンモードノイズ成分」を、0.1uFのコンデンサを介してGNDへ逃がすことができます。
このGNDへ逃がすことで、GNDの「リターン経路」が短くなることで放射ノイズを小さくすることができます。
- 変更前: 100Ω
- 変更後: 50Ω+50Ω+0.1uF
対策③:送信側ICの直近に「パスコン」を配置する
LVDSの送信側ICのパスコンに着目します。
送信側ICの電源ピンからパスコンが離れて実装されている場合は、できるだけ電源ピンのすぐそばにパスコンを配置し直します。
ICの電源電圧が変動すると、IC内部のトランジスタ回路もその影響を受けて、差動出力信号のプラスとマイナスのタイミングがずれて出力されます。その結果、「コモンモード成分」が出やすくなります。
パスコンは、できるだけICの電源ピン直近へ移動しましょう。
電源変動が小さくなって電源が安定するだけでなく、信号のノイズ低減にも効果があります。
対策④:フレキに対するノイズ対策
フレキの改造が必要なので、すぐにためすのは難しいと思いますが、参考に記載します。
- コネクタのGNDピンを増やして、送信基板側のGNDと、液晶コントローラ側基板を多ピンで接続する。(GND強化)
- フレキを「シールド付きタイプ」へ変更してみる。フレキからノイズが放射している場合は有効な対策。
まとめ:【LVDS】コモンモードノイズの対策
この記事では、LVDS信号の放射ノイズ対策として、「コモンモードノイズ」に着目した対策方法を紹介しました。
ノイズ対策は、回路設計の現場でいつも製品開発スケジュールの終盤。納期が目前に迫ってきて、精神的にかなりのプレッシャーがありますよね。
追いつめられると、ノイズ対策を思いつきでやって収拾がつかなくなります。
そんなときは、一晩ぐっすり眠って頭も体も休めてください。回路設計者の方、ほんとご苦労様です。
本記事が、回路設計者の方の一助になれば幸いです。
「LVDSの波形トラブル。アイパターンが歪む原因と対策は?」もぜひご覧ください。
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