実際の仕事で使う「電子回路設計CAD」ってどんなソフトがあるの?
「回路設計」と「基板パターン設計」の両方できるとうれしい。
こんな疑問にお答えします。
この記事では、設計のプロが現場で使っている「回路設計」・「プリント基板設計」のCADソフトを紹介します。
「これから導入してみたい!」と考えているあなたの参考になれば幸いです。価格は表の下段辺りに記載(オンラインストアなどから引用)。
回路設計・基板設計CADの比較表
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製品名 | CR-8000 シーアールハッセン | Quadcept クアワッドセプト | Altium Designer アルティウムデザイナー | OrCAD オアキャド | Fusion 360 ヒュージョン360 | CADLUS キャドラス | COLMINA CAE コルミナシーエーイー |
メーカー名 | 図研 | クアッドセプト(株) | Altium (アルティウム) | Cadence (ケイデンス) | Autodesk (オートデスク) | ニソール | 富士通 |
公式サイト | 公式サイトへ | 公式サイトへ | 公式サイトへ | 公式サイトへ | 公式サイトへ | 公式サイトへ | 公式サイトへ |
回路設計 | Design Gateway | Circuit Designer | Altium Designer | OrCAD Capture | EAGLE | CADLUS Schematic | PCB Design |
基板パターン設計 | Design Force | PCB Designer | Altium Designer | OrCAD PCB Editor | EAGLE | CADLUS One *2 | PCB Design |
クロスプロービング | (不明) | (不明) | (不明) | ||||
回路シミュレーション(アナログ) | LTSpiceと連携することで可能 *2 | Altium Designer | Pspice Basic | ||||
伝送線路シミュレーション(SI解析) | Design Gateway(プリSI解析) | Signal Integrity | |||||
価格 | ・Professional:9,800,000円 (参考価格) | ・Circuit Designer:45,980円/年 ・PCB Designer:114,950円/年 | ・Altium Designer:420,000円/年 ・Altium Designer SE:160,000円/年 | ・OrCAD Capture:50万円未満 ・OrCAD PCB Designer:100万円以上 | 61,600円/年 サブスクリプションのみで提供 | ・CADLUS Schematic:300,000円 ・CADLUS One:300,000円~ | 非公開 |
サポート対応 | Webサイト | ・電話、メール。 ・電話受付:平日9:00~18:00(土日祝・定休日を除く) | ・電話対応:なし ・チャット:24時間年中無休 | ・サポートシステム:24時間 ・スタッフ受付:平日9:00-17:30(土日祝・定休日を除く) | チャット、メール、電話(問い合わせオプションあり) | 電話、メール | Webサイト、電話 |
本社 | 日本 | 日本 | アメリカ | アメリカ | アメリカ | 日本 | 日本 |
代理店 | イノテック |
- 表の価格は、オンラインストアなどからの引用です(2023年6月時点)。詳細は各メーカー様や代理店様へご確認ください。
- *1:「Quadcept」にはシミュレーション機能はありませんが、アナログ・デバイセズ社の無料シミュレータ「LTSpice」と連携して「回路シミュレーション」ができます。
- *2:「CADLUS One(有料版)は、CADLUS X(無料版)とのデータ互換はなし」って公式サイトに書いてありました。データ変換が有料とは・・・。そもそもなんで互換性持たせなかったのかな?
この記事を書いているわたしは、デジタル回路設計歴20年です。これまでの経験と知識を活かし、現在はマネージャーとして商品企画や開発チームのサポートを行っています。
もくじ
回路設計・基板設計CADソフトの選び方(ポイント3つ)
回路設計・基板設計のCADを選ぶ基準はいろいろありますが、開発現場で働く設計者の立場からポイントを3つあげてみました。
上記3つが特におさえておきたいポイントです。
選定基準は、勤めている会社によっていろいろと思います。あくまで参考としてご覧ください。
ポイント①:価格
1つ目は、「価格」です。
初期費用や年間の保守費用はできるだけ安く抑えたい。やっぱり費用が超重要!
会社としては、残りの資金を新製品の研究開発費とかに回したいですからね。
ポイント②:使い勝手(利便性)
2つ目は、「利便性」(使い勝手)です。
かんたんに言うと、「回路設計・基板設計の仕事が、今よりラクになること」です。
CADの操作性&機能性を上手く活用して、工数短縮したいですね。
CADメーカーが違うとデータ変換(例:ODB++形式)してから受け渡しするので手間が増えます。できれば、回路設計CADと基板設計CADは同じメーカーに統一すると、データの受け渡しがかんたん&確実にできて便利です。
また、部品選定と在庫調査が連携できると便利です。
わたしの場合、回路設計の部品選定は、まずネット在庫の有無を調べて、次に在庫がある部品の中から選びます。部品点数が100個とか多くなると、部品選びだけで何時間もかかっていました。
最近のCADはクラウド上で設計データや部品の在庫情報を一元管理できるように進化している。これは便利すぎますね!
ポイント③:サポート対応
3つ目は、「サポート対応」です。
CADの費用は安いけど、サポート費が高いメーカー。一方、CADの費用は高いけど、サポートも手厚いメーカーなど様々です。
回路設計業務をしていると、「CADのバグで作業中断!」ってことが現場ではあります。そんな場合、CADメーカーには素早い対応をしてほしいところ。
受付の時間帯や、土日のサポートの有無など、導入前によく確認しておく方がいいです。
使い方や技術的な質問の電話・メールに素早く回答してくれるCADメーカーだと、安心して使い続けられますね。
電気設計CADの国内普及率(国内シェア)
以下は、電気設計CADの国内シェア(2019年度)です。
上記シェアは、回路設計CADと基板設計CADなどをあわせた数値[%]です。どっちの用途が多いか少ないかまではわかりません。
引用元:
EPLAN公式ブログ 電気設計CADのシェアと普及率は?機械CADの2D-CADと3D-CADシェアと普及率と比較して考える
図研のCADについて(個人の感想)
シェア3位「CR-5000・CR-8000」は日本の「図研」。
1976年設立されてから続いている会社だけあってさすが手堅い。
安定感はあるけど、気になるのは価格。当サイトの比較表では、図研は他社よりもかなり高そう。
設計現場で働く立場としては、「これだけのお金を払ってでも使うメリットってあるのかな~?」って思ったりしますね。
ほかのCADメーカーはサブスクでかなり買いやすい値段になっています。
他社と比べて、これからどうユーザーに付加価値を訴求していくか気になるところです。
回路設計・基板設計CADソフトの導入前チェックリスト(7項目)
新しくCADソフトを導入する場合、自社のニーズや要件に合ったCADソフトを選ぶためにはどのようなポイントを検討すべきでしょうか?
ここでは、導入前に絶対に確認しておきたいチェック項目を7つ紹介します。
大きな費用をかけてまで導入するメリットがどこまであるか、この判断がなかなかむつかしいですよね。
少なくとも上記の点はしっかり洗い出して、「費用対効果」を見極めしたいですね。
【回路設計者向け】覚えて損なし! 仕事がラクになる基板設計CADの操作3つ
ここでは回路設計エンジニアの方向けに、基板パターン設計CADで「この操作は覚えて役に立たった!」と思えた操作を3つ紹介します。
回路設計者が基板設計CADも使いこなすのは大変ですが、以下の操作を覚えるだけでも、回路設計業務が今よりずっとラクになります。
① 部品の仮配置をする
部品配置を、図面ソフトで作って、基板設計会社へ渡すのは二度手間!
基板設計を外部委託する前に、社内でCADを使って部品を仮配置しておく。出来上がったCADデータを基板設計会社へ渡せば配置する時間を省略できます。
② 基板パターンの検図をする
PDFファイルでパターンを検図するのはキツイですよね? PDFではとてもパターンを追いかけられないですね。
でも、回路図と基板パターンが連動できる「クロスプロービング機能」は超便利!
「クロスプロービング」は、回路図で部品や配線を選ぶと、基板データ上でその部品や配線をハイライト表示してくれる機能です。パターンのどこに部品があるか、探す手間が不要になります。
③ 基板パターン修正をする
パターン修正が多いときは外部委託するけど、修正が少しのときもわざわざ資料にまとめて依頼するのは面倒だし、費用もかかりますよね。
そんな場合は、社内でパターン修正した方が手っ取り早いです。
パターン設計を一からできるようになるには時間がかかって大変ですが、ビアの追加やパターンの引き回しを少変更できる操作はぜひ覚えたいですね。
コスパで選ぶなら、純国産のCAD『Quadcept』(クアッドセプト)
純国産の電子CAD『Quadcept』。お手頃価格でハイエンド。大手企業から中小企業まで多くのメーカーが導入しています。
引用元:Quadcept社公式サイト(2023年6月時点)
LTSpiceと連携してかんたん回路シミュレーション
Quadceptには、電子回路シミュレータの定番「LTspice」との連携機能があります。
>> 「QuadceptとLTSpice連携について」(公式サイト)
回路設計CAD「Circuit Designer」で作成した回路図を、LTspice上で回路シミュレーションができます。
操作はマウスを数クリックするだけ。以下のYouTube動画で実演がありました。ほんとかんたんです。
『QuadceptとLTspiceの連携機能』の紹介動画です(10分程度)。加藤社長の思いが熱い! ぜひご覧ください。
消音(ミュート)で再生します。音声出力する場合は、動画左下のスピーカーアイコンで、ミュート解除してください。
引用元:LTspice Users ClubのYouTube動画 「設計がもっと楽に!Quadcept社のLTspice連携機能!」
わかりやすいオンラインマニュアル
CADのマニュアルって操作説明が分かりにくいものが多いですが、QuadceptのWebサイトのオンラインマニュアルが充実していてびっくり。
ユーザーのひとつひとつのアクションを想定して、ていねいに書かれています。そのとおりにすれば基本的な操作はできました! こんなわかりやすいマニュアルはホント助かりますね。
以下が、サポートページのメニュー一覧です。
右側の「質問・相談」→「問題解決フォーラム」は、実際のユーザーの問い合わせに対する回答がのっています。操作の不明点とかは、ここを見るのも参考になります。
まとめ:仕事で使う回路設計・基板設計CADソフトを徹底調査
この記事では、実際の設計現場で使われている回路設計・プリント基板設計のCADソフトを紹介しました。
新しいCADを導入する前は、評価版ソフトで、回路設計~基板設計まで一通り使ってみて、どんなメリット・デメリットがあったか書き出しておきましょう。
大きな費用をかけて導入するメリットがどこまであるか、「費用対効果」をしっかり見極めしておきたいですね。
もし「どんなポイントを検討すべきよくわからない」、という方は以下のチェックリストを参考にしてみてください。
>>回路設計・基板設計CADソフトの導入前チェックリスト(7項目)
下記リンクでは、プリント基板の「シミュレーション用ソフト」を紹介しています。
USBやPCE Expressなどの伝送レートはGbpsオーダーです。正しく通信するためには、試作を作る前のプリント基板設計段階で「伝送線路シミュレーション」(SI解析)を行うのが必須となっています。
プリント基板のシミュレーション・ソフトウェアに興味のある方は下記リンクもぜひご覧ください。
【無料あり】プリント基板のシミュレーションソフトを徹底調査(SI・PI・熱解析)
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【無料あり】プリント基板のシミュレーションソフトを徹底調査(SI・PI・熱解析)
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